目次
この本の概要
タイトル | まほろ駅前多田便利軒 |
著者 | 三浦しをん |
出版社 | 文藝春秋 |
出版日 | 2009/1/9 |
三浦しをんさんの作品で、第135回(2006年上半期)の直木賞受賞作。
まほろ駅前で便利屋を営む店主が主人公の物語。
本作の続編として、「まほろ駅前番外地」、「まほろ駅前狂騒曲」があります。
この作品は映画やドラマ化もされていて、瑛太と松田龍平によるコンビで見ごたえがありました。
どんな人にオススメ?
- 嫌なことが続いて、ちょっと肩の力を抜きたいと思っているひと。
- 渋い大人の香りに惹かれるひと
- バツイチ
- ↑でも楽しくいきたいし。十分楽しい。
本作はパロディの要素も楽しいですが、
便利屋を訪れるちょっと訳ありそうな人物が醸し出す暗い部分も伝わってきます。
それを救う店主の優しさから心の温かさを感じたり、現実と向き合っていたりと
人情味が伝わってきます。
大きく深呼吸をして、少し肩の力を抜いて、リセットしたいときにちょうど良いと思います。
この本の所感
繰り広げられる珍事件を便利屋が解決する痛快劇

東京都町田がモデルとなっている「まほろ市」を舞台に、
便利屋を営む店主と、癖が強めなキャラクターで繰り広げられる人情劇。
主人公で店主の「多田啓介」は静かだけど、面倒見のよさそうなおせっかいな/放ってはおけない縁の下の力タイプ。
そんな店主とコンビでこの物語をかき乱していく最重要人物的存在なのが「行天春彦」
「ぎょうてん」って
名前がインパクトありすぎですね!
こんな2人がする仕事は便利屋だけあって、舞い込む相談ごとは
ちょっと訳ありを感じる謎めいた依頼ばかり。
1章ごとに単発の依頼かと思いきや、
ストーリーが進むごとに、徐々に2人のバックグランドが判明していき、
過去と葛藤しながらもリアリティの中から
進もうとする便利屋の2人に、自分の経験を照らし合わせて共感してしまいました。
本作はシリーズ作品となっていて全部で3冊あります。
「まほろ駅前多田便利軒」の続編で「まほろ駅前番外地」と「まほろ駅前狂騒曲」も一緒に楽しめます。
映画とドラマでも映像化もされています。
瑛太(多田)、松田龍平(行天)がとてもはまり役だと思いました。
2人の空気感が絶妙で、
傍から見れば、渋いし格好良いし、それだけで儲けられそうだけど。
便利屋はそんなにうまくいかない。
そんな苦労の狭間を垣間見ながら応援できます。

タイトルからは想像できない抒情詩
最初に本のタイトル「まほろ駅前多田便利軒」を見た時は、
「ぽか~ん。。。長いタイトルだな。」しかも、勝手に「便利軒」を「便利屋」だと思っていて、しばらく間違えて認識していました。
この本を手に取る決め手になったのは
作者の三浦しをんさんの作品だったからでした。
私は気に入った作者がいると、その作者縛りになることが頻繁で
三浦しをんさんの作品は
・舟を編む
・神去なあなあ日常/神去なあなあ夜話
・風が強く吹いている
と続けて読んでいたところに、本作に出会いました。
三浦しをんさんの作品からは
文字から登場人物の芯となる部分がしっかりしたものが伝わってきて、
静かに、文字をかみしめながら読書のひとときを楽しみ、
作品を読み終えると不思議とクリアで静かな気持ちに戻っている。
そんなリセットタイムを堪能していました。
ただし、「まほろ駅前多田便利軒」のタイトルを見た時は、まったく内容が想像できず、
新しい冒険の感覚でした。
泥臭く生きる2人からの言葉が染みる。
先入観無しでこの本を読み進めたこともあって
最初は三浦しをんさんの作品だし、
真面目な設定をイメージしていました。
そしたら、登場してくるキャラが強烈過ぎて。
特に私は娼婦のルルとハイシーと、裏社会でいきる岡が印象的でした。
パロディな展開を単純に楽しみつつ、そこに込められた情緒的な名場面、名シーンの数々。
名言にしびれる。
思わず、本を読むのをやめて、感慨に浸ってしまう。そんな体験をしました。
ちょうど、私がこの本を読んでいたのが
多田と行天と同世代の30代とあって、
酸いも甘いも。好んで経験したくない挫折や経験もそれなりに重ね
でも、まだまだ捨てたくない、肯定したい自分の人生をもがく時期を
この2人に照らし合わせて、苦労を乗り越えてもらう役割を担ってもらっているようでした。

苦労を知るからこその守りたい大切な人の幸せ
多田と行天は飄々と今を生きているようで
結構、暗い過去がベースになっていることも描かれています。
映画やドラマのキャストになった瑛太(多田)と松田龍平(行天)であるように
私はすごく渋くて格好良い2人だと思いました。
闇を抱える2人だからこそ繰り出せる思いやり。
踏み入れない方がよい状況を察知して、手を差し伸べてくれる感覚。
自分を度外視してでも人を救おうとする行動。おせっかい。
そこが多田便利軒の良さで、常連客のよりどころになっているのかな。と思いました。
苦労を知るからこその幸せの大切さ。
それを必死に守ろうとするあまりに、やっかいな事件に巻き込まれ、戦いながら乗り越える美学がたまらない作品です。
代表的な名言は
・愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことだと
・だれかに必要とされるってことは、だれかの希望になるってこと
・知ろうとせず、求めようとせず、だれともまじわらぬことを安寧と見間違えたまま、臆病に息をするだけの日々を送るところだった。
・幸福は再生する
この言葉の深みにはまれたのは、三浦しをんさんの作品ならではの味だと思います。
どの場面で繰り出されたかは本を読みながら、ご堪能ください。
最後にこれだけは見てもらいたい映画のワンシーン
作者縛りで出会った「まほろ駅前多田便利軒」の作品ですが。
実は私の好きな直木賞作品でもあります。第135回の直木賞を受賞されています。
直木賞受賞作、三浦しをんさんの作品
それだけで説明不要の名作だと思っていただけると思います。
最後にこれだけは・・・
小説もおススメですが、
私が印象に残っているのは実は映画でのシーンです。
行天が満身創痍で走る姿が・・・(笑)奇妙で面白すぎ!
不思議すぎる走り方
これは絶対に見てもらいたいです。
走る姿だけで行天ワールドを感じました。お楽しみに。