
8作家が共通のルールを決めて、さまざまな時代の物語を紡いでいく
「螺旋プロジェクト」
原始時代・BC3000年を舞台にしたのが
カタコト感のある「ウナノハテノガタ」
現代の情報がすぐに手に入る世界に慣れてしまったせいか、
原始時代の社会で
目の前の事象に向き合うこと、わからないことへの混乱に必死に向き合い「生きる」
この根本を感じました。
この本の概要
| タイトル | ウナノハテノガタ | 
| 著者 | 大森兄弟 | 
| 出版社 | 中央公論新社 | 
| 出版日 | 2022/11/25 | 
人気8作家による競作企画・螺旋プロジェクト
海vs山を描く構図で舞台となるのは原始時代。
海の民の呼び名は「イソベリ」、山の民の呼び名は「ヤマノベ」
  
原始の時代から始まった海族と山族の対立。
仲間への想い、争い、自然の摂理に対して生物としての向き合う描写が印象的でした。
どんな人にオススメ?

- 現代だけでなく、原始時代系もOKな人
 - ジャンル横断型の人
 - 原始時代の没入体験
 - 螺旋プロジェクトを読破したい
 
「ウナノハテノガタ」は時間軸が原始時代の設定のため、
現代の感覚から原始を想像して、「おそらく、こうだろうな」と思考をチューニングしながら、ストーリーに入っていくような本です。
描写は現代向けに言葉の説明が加えることもなく、
原始人が見ている視点のため、カタコトや単語や言葉の響きから、必死にイメージを追いつかせる感じのため没入感はありました。
所感
タイトルのカタコトが原始っぽい

螺旋プロジェクトを制覇したいという意気込みから
8作中5作目にこの本を選びました。
この本のタイトル、時代設定を見て
どこか、未知なものに手を出す恐怖心とワクワク感がシーソーのように揺れて
なかなか決心できませんでした。
私の勝手な想像で、原始時代の言葉や描写が現代に人でもわかるような
解説的な文書もあるのかと思っていましたが、
カタコトに扱われるワードから
現代の言葉から何となく想像できる言葉の原型がすると、「海のことかな。」、
「対岸の島のことかな」と必死に想像しながら理解していく感覚でした。
みなさんは、「クロノトリガー」というゲームを知っていますかね?
私が小学生の頃に大ヒットしたゲームで、
主人公がいろいろな時代を行ったり来たりするゲームなのですが、
そこに原始時代もあって。
この本に出てくる人の話し方がクロノトリガーに出てくる原始人と同じ感じだったので懐かしくなりました。
私はそこを突破口に、この物語の親しみを感じました。
海の民・イソベリに伝わる儀式

海の民・イソベリは死の概念を知らず、
動かなくなった、壊れたと捉えているのが衝撃的な描写でした。
イソベリとヤマノベの戦いの場面は山場で、読んでいて、私も言葉と苦しいシーンとの戦いでしたが、
きっと原始時代ってこんな感じなのかなとリアルさを感じました。
情報や言葉の完成度がすべてではない現場を見るチカラ

言葉を想像しながら読む必死さ、没入感から
客観的に理解するだけを楽しむだけでなく、物語の世界に入り込むことが体験でいた本でした。
この本は、
本の中に一緒に入り込み
情報が少ない中で、何が起きているのかがわからない状況も感じる感覚でした。
現代のように先に情報を調べて、答えが分かっている状況に安心するのではなく
目の間にある現物がどう映り、
どう扱うのか、とまどい、じれったさを含めて体験できる本でした。

				    
			