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声なきSOSは1人じゃない。辛さを経験しているから人に優しくできる。「52ヘルツのクジラたち」

声なきSOSは1人じゃない。辛さを経験しているから人に優しくできる。「52ヘルツのクジラたち」

52ヘルツのクジラとは世界でもっとも孤独なクジラ。

仲間に声が届かない。すごく切なさを感じます。

52ヘルツのクジラ ≒ 声なきSOS(虐待を受けている子供)

重いテーマを扱った内容ですが、最後は温かい光がみえてくる本でした。

この本の概要

タイトル52ヘルツのクジラたち
著者町田 そのこ
出版社中央公論新社
出版日2020/4/18

2021年本屋大賞受賞作品。

社会問題を扱うテーマだけに胸を締め付けられるようなシーンがありますが、
それを乗り越えていくために大切な何かを感じさせられました。

2024年3月に映画化もされました。

どんな人にオススメ?

  • 社会問題に関心のあるかた
  • 虐待、DV、毒親のテーマの本でも抵抗感がないかた
  • ヒューマン系が好きなかた

2024年に映画化され、ポスターやチラシ、特設サイトを見たことがある人もいると思います。

苦しみの中から、微かな光を見出し、広げていく。

しっとりヒューマン系の話が好きな方にはジーンとくる物語だと思います。

この本の所感

声なきSOSの苦しみがわかる本

虐待を扱った内容のため、重いテーマに感じました。

虐待されて辛く感じていても、誰かに伝えられない孤独感。

ずっと暗いままではなく、孤独から救い出してくれる存在があったり、
虐待をする人と戦ってくれる存在があったりと、
自分の味方になってくれる存在の温かみに触れることの素晴らしさも感じました。

冒頭は、
大分にある海の街に一人で暮らし始めた26歳の女の子。
かなりの訳あり感が漂う始まり方でした。

この本の主人公は三島貴瑚(キナコ)。

弟を可愛がり、キナコには辛く当たるお母さん。
義父はお母さんがキナコを虐待していても見て見ぬふり。
家にキナコの居場所はなく、それでいて解放もされず、一か所に閉じ込められる日々。
とにかくキナコの生い立ちに衝撃を受けました。

そんな境遇から救い出してくれたのは友人の美晴とアンさん。

そして、大分の街で出会った
言葉がうまく話すことができず、影を感じる少年。

少年を虐待する母親(琴美)
琴美が虐待していても見て見ぬふりをする琴美の父親(品城さん)。

キナコから少年へ
自分たちの苦しみを誰にも届けることができない似た者同士だからわかる
助けてあげたい気持ち。傍にいることの大切さ。
脅威へと立ち向かう勇気。

そこに優しさと温かみを感じました。

リアルな難しい問題を考えるきっかけに

前知識なしで「52ヘルツのクジラ」を知らなかった私にとっては、かなり想定外のテーマでした。

タイトルに「クジラ」と入っていたので、
最初は勝手に海の中をクジラが優雅に泳いでいるところを想像し、
いい感じに人間と交流するのほほんとするストーリーと思っていましたが、
読みが甘かったですね。

52ヘルツのクジラとは孤独なクジラのことだったのですね。
一般的なクジラがなく音域から外れた鳴き方のため、
他のクジラや仲間たちからは声が聞こえず、声を届けたくても届かない。

52ヘルツのくじら ≒ 声なきSOS(虐待を受けている子供)

これをテーマに扱った作品だったのですね。
虐待というと難しくて、目をそむけたくなる問題。
当事者にとって何が一番良い答えなのかがわからない。
どう手を差し伸べてあげればよいのかわからないもどかしさ。

この作品ではキナコが少年の琴美や品城さんに立ち向かっていった姿を見て、
一緒の立場から立ち向かってくれる存在がいることの温かみを感じました。

もらう側から与える側へ

この本で一番の名言だと思ったのは
「ひとというのは最初こそ貰う側やんけど、いずれは与える側にならないかん。
貰ってばかりじゃいかんのよ。親になれば、尚のこと」

本作では
母親から虐待を受けていたキナコを救い出してくれた美晴とアンさん

今度はキナコが母親からぞんざいに扱われる少年に手を差し伸べる。

恩の巡りがあるからこそ、人とのつながりに温かみと勇気を感じます。
ただし、
虐待してしまう親は何らかの劣等感や被害者意識があって、
その矛先が子供への暴力や暴言につながってしまう。
そこの因果を感じました。
だからといって、親が子供へ虐待をすることで、親のエゴを保っても何も好転しない。
そんな中、年齢を重ねた人からの一言が凄い深みがあると思いました。

苦しんでいることをわかってあげて、助け合う絆

この本で52ヘルツのクジラに例えた登場人物は1人ではないな。と思いました。

・キナコの生い立ち
・アンさんのバックグランド
・これまでの少年の経緯

それぞれに深い事情と苦しみをもつ声なきSOSを抱えた52ヘルツのクジラたち。

決して似た者同士ではないけど
それぞれに52ヘルツのクジラ(声が届かない)の要素をもった人との結びつき。

辛さがわかるから人に優しくできる。

1人で抱えていて潰れてしまいそうになることでも、
声を聴いてくれようとする存在がいることは大きいですね。

最後にひとこと

結構、重い内容が詰まった内容でしたが、
1人で重い内容に耐えて読むというよりも、キナコの周囲で手を差し伸べてくれる
キャラから助けてもらいながら読み進めていくうちに
勇気づけられていく感じでした。

52ヘルツのクジラは1人で孤独だけど、
違う境遇で孤独を経験してきた人は、たくさんいて、
その人たちは辛さがわかるから、苦しんでいる人をみると優しい言葉をかけてくれる。
そんな巡りあわせに希望を感じて温かくなりました。

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