
武士道シックスティーン
武士道セブンティーン
武士道エイティーン
3部続いてきたので、続編はどの年齢がタイトルに来るか?
と思っていたら「ジェネレーション」ときました。
ジェネレーション→和訳すると世代。
高校時代に剣道にうちこんでいた2人の剣道女子「香織」と「早苗」が
社会人となり、いろいろな世代と関わりあいながら、
剣道のように攻めと守りを体感しながら武士道の神髄に迫っていくような本でした。
目次
この本の概要
タイトル | 武士道ジェネレーション |
著者 | 誉田 哲也 |
出版社 | 文藝春秋 |
出版日 | 2018/9/4 |
高校と大学を卒業し、社会人となった「香織」と「早苗」の武士道シリーズ第4弾。
香織の師範である桐谷玄明先生の体調不良で道場の閉鎖危機に。
一方、早苗は結婚の節目をむかえる幸せなタイミング。
香織は桐谷道場を守ることができるのか?存続させるためにはある特訓が必要らしい。
どんな人にオススメ?
- 武士道○○ティーン3部作を読んで、続きが気になっているひと
- スポーツや武道を通じた成長物語に興味があるひと
- 自称磯山香織と甲本早苗ファン
武士道○○ティーン3部作の続編なので、読んだことが無い方は
武士道シックスティーンが順に読むことをおすすめします。
本作では高校生だった2人が社会人となり、どんな風に成長しているのかを楽しめます。
この本の所感

どんな本か
本作は高校で女子剣道をしていた「香織」と「早苗」の大学卒業後の歩みを描いた
武士道○○ティーン3部作の続編です。
本の構成は香織→早苗→香織→早苗・・・と
2人交互に同時進行で描かれており、テンポ良く展開を楽しめました。
エイ!ヤー!メェェエーン!!
と高校生らしい勢いの良さとエンタメ感覚で楽しめた前作の続きを想像していました。
本作はスピンオフ的なふわふわしたストーリーかと思いましたが、
剣道で究極に強くなることを目指す武道家らしい物語で読み応えがありました。
「内容は強くなるとはどういうことなのか?」をテーマに
武士道らしく、思慮深く考えながら読める本でした。
ライフステージの変わり目である
・学生から社会人へ
・結婚
・桐谷道場の跡継ぎ問題
・後輩たちの成長と悩み
など、香織と早苗の世代だけでなく、先生達の世代、道場に通う後輩達の世代との関わりを描いているところから、このタイトルに「ジェネレーション」が入っていることが分かりました。
なぜこの本を選んだのか/なぜこの本を紹介したいか

以前にこのブログで武士道○○ティーン3部作を紹介した後から
2人のその後が気になっていて、物語の時が進んだ「ジェネレーション」があることを知って、楽しみにしていました。
・香織みたいな勝気な性格は社会に順応できるのか。
・早苗みたいなふわふわした感じだけど、芯を曲げない子はどうなっていくにか。
2人のファンの私として、「待ってました!」という感じです。
キラキラした高校生から大人になり、大学卒業から社会人になる節目や
結婚というライフステージの変化で年輪のように成長の幅を広げていくところが感慨深かったです。
大人になっても、香織と早苗の個性は相変わらずで安心しました。
心に響いたことは?
この本で私が好きなシーンは2つありました。
1つ目は「13章 好敵手」
2つ目は「20章 違う、違うの!」
でした。
好敵手
桐谷道場を香織が継ぐには、代々受け継がれたある秘伝を習得する必要があり、
その特訓で忙しい香織は全国大会に出場せず。
事情を知らないライバルの伶那は、香織に喝を入れるために桐谷道場へ。
2人で稽古をしてみて、一皮むけた感のある香織からは達観の領域入ったものを感じました。
「少しだけ、この「武士道」という道を、真っ直ぐ進んだだけだ。」
香織らしい格好良い言葉でした。
違う、違うの!
特訓の内容は剣道とはかけ離れた競技の稽古みたいなもの。
傍から見たら危なくて、途中で止めに入りたくなるようなもの。
それでも桐谷道場を守りたい香織が門下生に投げかけた言葉にジーンとしました。
「人が何かを守ろうとするとき、必要となるのは、やっぱり力なんだ。」
「相手よりも圧倒的に強くて、でも暴走しない、冷静な力がないと、守りたいものも守れないんだ。」
攻め一辺倒の強気キャラの香織から、
強くなるための「守り」という言葉が出てきたところに、本当の強さを感じました。
本について何を感じたか「なぜ生きるかではなく、どう生きるか。」

この本は剣道の話なのですが、「武士道」を扱うだけあって人生の道しるべみたいなものを感じました。
おそらく、
香織は桐谷道場の奥義を習得する過程で、身に纏うオーラみたいなものが大きくなっているのだろうな~と思いました。
強くなりたい香織にとって、剣道の全国大会で優勝すれば
最強を証明できるものなのか・・・そうでもなさそう。
同時期にあった桐谷道場閉鎖の危機をきっかけに、
回り道をしながら本流に戻ってみると、すごく強くなっていることに気づく。
本作でも人生の歩み方を木に例えていて
縦に長く延びるだけでなく、年輪をしっかり重ね強い幹になっていく。
これが強くなるために大事なことなのかと思いました。
余談

早苗の高校時代の顧問・吉野先生と香織が稽古で緊迫した駆け引きをするシーンから
武道の達人が並みの人を寄せ付けない殺気、立ち振る舞いの凄みが伝わってきました。
ただし、傍からみると何が凄いのかわからない。
この時、ふと思い浮かんだのは、
武道家が山に特訓にいき、一心不乱に何かに打ち込んでいる。
そして、哲学者のように何か考えて、追及しようとしている。
山から返ってきたら、凄い強くなっていた。
なぜ強くなれたのか、その極意は何か。本人にはわかるけど、
回りには分からない。突然、魔法がかかったみたい。
(知らない人もいるかもしれませんが)
まるで、
ハンターハンターのネテロ会長のようでした。
ざっくりいうとこんな例えです。
最後に一言

剣道をテーマに武士道の神髄に迫っていくように物語を楽しめました。
桐谷道場の師範・玄明先生が語っている
「圧倒的な強さ、でも暴力ではない、
研ぎ澄まされ、しっかりと制御された圧倒的な強さで暴力を制す。」
これを心技体に染みこますために特訓した日々が、遠回りのようで核心に迫っていくようでした。
武士道ジェネレーションでは香織と早苗が一生懸命もがいているところから、
生きることの深みを感じました。
縦に伸ばすだけが成長ではなく、いろいろな世代の人と関わりながら
経験の幅を広げ、年輪を増やし、人として強くなっていく。
私は剣道や武士道の心得を学んだ身ではありませんが、
自分自身も経験を積み、そして、次の世代の子供たちにはがっしりした樹のような存在でありたい。
私もそんなお父さんになれたら最高ですね。