
「マラソン」と聞くと辛そう。3キロ走れと言われたら絶対に無理。
自分で走るのは嫌いだけど、毎年正月に開催される箱根駅伝の中継は楽しみにしている。
毎年、ドラマがあり感動して涙してしまう。
という方も多いと思います。
三浦しをんさんの作品「風が強く吹いている」は、箱根駅伝にチャレンジする大学生たちによる感動ストーリーです。
なぜ、長い距離を辛いのに走れるのか?
この本を読んだら、なんだか分かった気がします。駅伝って、良いですね。
目次
この本の概要
タイトル | 風が強く吹いている |
著者 | 三浦しをん |
出版社 | 新潮社 |
出版日 | 2006/9/22 |
正月の風物詩となっている箱根駅伝を舞台とした青春スポーツの作品です。
走ることが好きな二人の大学生を中心に、様々な個性を持った駅伝チームが箱根駅伝の出場に向けて、チャレンジする物語です。
どんな人にオススメ?
- 「リーダーシップ」を発揮したい人
- 「チームビルディング」が大事だと思う人
- マラソンや駅伝を見るのは好き。だけど自分で走るのは嫌な人
- スポーツで感動するタイプの人
私は主人公「ハイジ」の緻密な計画と人の動かし方が上手な好きで
リーダーシップを感じました。
スポーツ、部活、サークル、ビジネスの中でチームをまとめる役回りが好きな人におすすめです。
この本の所感
このメンツで箱根駅伝に出れるの!?

この物語の主人公的扱いなのは同じ大学に通う「ハイジ」と「カケル」の2人。
ハイジは大学寮の管理人で、この寮の住人は合計10人。
住人はヘビースモーカー、秀才、オタク、など
駅伝の戦力とは言えない個性派の10人衆。
10人なら10区間ある箱根駅伝に参加できる人数という単純かつ無謀なチャレンジが始まります。
走ることが生きがいのカケルにとっては、
メンバーとのモチベーションや走力のレベルにギャップがあり過ぎで
衝突がありながらも迫りくる本番までの日々。
ハイジのマネジメント力と箱根駅伝にかける本気度
途方もない目標にも見えますが、ハイジの人心掌握術と緻密なマネジメント力が光り、
なんとなく勝ち筋が見えてくる展開に、
ひょっとしたらひょっとするかも。という期待感がありました。
素人の集まりで弱小軍団と言えるチームが勝つ方法とは?と、聞かれた時に、
「とにかく頑張る!鍛える!負けない!!」
みたいなスポ根、頑張る美学の抱負を語ることはあると思います。
ただ・・・そうは簡単に達成できないのが現実ですよね。
今の世の中は、目的からの逆算理論の方がウケは良いかもしれません。
「限られたリソースの中で、最大限のパフォーマンスを発揮するためには○○が必要」
その結果、○○で優勝できました。
というお手本のような話は、ビジネスのサクセスストーリーでもよく聞きますね。
さまにそれを本の中で体現していたハイジのリーダーシップだったと思います。
高すぎる目標に対して、「頑張れ!」と言われると途方にくれますが、
今の自分には何が期待されていて、そのために今、足りていないものは何か。
何を達成すれば、ゴールに近づけるか。
この納得感が箱根駅伝チャレンジに進むメンバーを巻き込み(強引に巻き込まれ?)
チームビルディングしていくハイジが頼もしかったです。
この本ではかなりコミカルに展開されていますが、単なる愉快な物語だけではなく、
ビジネスのサクセスストーリーとしても勉強になりました。
この本で一番印象に残っているところは?

やはり、駅伝本番のシーンでした。
駅伝は自分の区間をスタートしたらゴールまで、襷をつなげるために1人で走り切らないといけない。
なんとも孤独ですよね。
マイペースに走れるならともかく、
周りにはライバルがいて、抜かされることもあるし、自分が抜くこともある。
優勝争い、シード権争い、無念の繰り上げスタートで襷が途切れることもある。
1人で戦っているようで、残りのメンバーも背負って戦う。
そこが駅伝の素晴らしさだと感じました。
本の中では1区間ずつメンバーが走るシーンが個性豊かに描かれていて、
走者の回想シーンに入っていくところに惹きこまれました。
「きつい。足が痛い。」など自分との闘いの中で、仲間の想いに気づき、仲間にも背中をおしてもらって襷をつなげる10人の意地を感じました。
駅伝はひとりじゃない
スタートからゴールまで、みんなで襷をつなぐもの。
でも、仲間と一緒のコースは走れず、孤独と闘いながら、次の走者に襷をつなげていく。
サッカーやラグビーのような団体競技とは違う魅力がありますね。
・ハイジに巻き込まれてはじまったメンバー達のチャレンジ
・駅伝本番にたどり着くまでの過程
・これまでの苦労と頑張りを全部回収していくような本番の走り
駅伝を戦うためのチームビルディングと、リーダーを信じてついていく諦めない若者たちに感動しました。
襷でつなぐみんなの絆

風には逆風と追い風があって、
駅伝にはどちらかというと逆風で辛さに耐えるイメージしかありませんでした。
どんなに逆風の中を1人で走っていても、メンバーの想いを乗せて、
辛い時ほど仲間の顔を思い出し
一歩ずつ足を前に出すときは、追い風を感じるものなのかも。と思いました。
そんな絆を作るまでに、
個性的なメンバー同士で努力してきた過程と、それを上手く組み立ててきたマネジメントが凄いなと思いました。
私は毎年、箱根駅伝を見ながらこの本のことを思い出します。
駅伝をより一層楽しみたい方は予習を兼ねて読んでみると面白くなると思います。